2019年10月02日

鉄道車両にGPSアンテナが不要な理由

野生動物の生態を研究するやり方を知っていますか。

ときどき、テレビでも野生動物の生態について紹介する番組
が放送されていて、研究する過程について、紹介するときも
あるから、そう言うのを見た事がある人はイメージしやすい
かもしれません。

野生動物ですから、動き回りますよね。動き回る動物を常に
観察し続ける事が出来れば良いのですけれども、どこまでも
いつまでも追いかけ続ける事は困難が伴います。人間が行動
する事が困難な道筋、例えば、水の中だったり、空だったり、
土の中だったりを、人間よりはるかに早く行動してどこかへ
行ってしまうでしょう。人間が動物の動きを常に観察し続け
ようとすれば、観察する以外に人間がやらなければならない
事が何一つ出来なくなってしまいます。

そこで、古くから行われているやり方は動物に目印を付ける
事です。目印を付けた動物が、次にいつどこで再び出会うか
によって、動物の行動を推しはかる事が出来るのです。

目印には、動物の個体の特徴を覚えておくやり方と、動物の
個体に実際に首輪、足輪、タグ等を付けるやり方があります。
どちらにしても、一つの個体に目印を付けただけでは研究の
目的が達成出来ない可能性があるので、複数の個体に番号や
名前等を付けて管理する事になるでしょう。

また、動物の個体に実際に何かを付けるやり方をやるときに、
発信機を付けたり、GPS機能付の発信機を付けたり、カメラを
付けたりして、より詳しく観察出来る事もあります。

ただし、必ずしも、動物に目印を付ける事が出来るとは限り
ません。個体数が少なく、出会う事が稀で、見つける事から
始めなければならない事もあります。目印を付ける事が禁止
されている事もあります。個体の特徴が乏しい事もあります。

その場合は、ひたすら観察し続けるしかありません。足跡や
排泄物等の痕跡から生態が推測出来る事があります。出会う
可能性がある場所で待ち伏せする事もあります。人間がその
場所にいて観察する事もあれば、カメラが代わりになる事も
あるでしょう。このとき、動きに反応して撮影するカメラが
活躍する事もあります。

――◇◆◇――

ここで、ちょっと技術が進歩した未来に、野生動物の生態を
研究するやり方は、どうなっているか、考えてみましょう。

動物の言葉が理解出来る技術が開発されて、動物にも自分の
名前がある事がわかったとしましょう。実際には、鳴き声を
聞いて個体を識別出来るようになる技術が考えられます。

そこで、動物の個体に自動で目印を付ける装置が考えられる
様になりました。餌で動物をおびき寄せて、鳴き声を聞いて
個体を識別出来たら、動物に名前が刻印された目印を付ける
装置が実用化されました。この装置で研究対象の個体の数を
増やす事が出来る様になりました。

次に、発信機を付ける装置も実用化されました。GPS機能付の
発信機を付ける装置も実用化されました。そして、カメラを
付ける装置も、次々と実用化されました。

ただし、必ずしも、動物に目印を付ける事が出来るとは限ら
ないと言う問題は残りました。餌に反応しておびき寄せられ
ない動物がいる事がわかりました。おびき寄せられても鳴か
ない動物がいる事がわかりました。識別出来ても目印が付か
ない動物がいる事がわかりました。

そこで、鳴き声を聞いて個体を識別出来たら、動物の見た目
を分析して、動物の個体の特徴を覚えておく事が出来る装置
が実用化されました。おびき寄せられた動物が鳴きたくなる
仕掛けが、あの手この手色々と考えられるようになりました。

餌で動物をおびき寄せるのでは無くて、動物が良く通る場所
に罠を仕掛けて、鳴く様にさせて、動物の見た目を分析して、
動物の個体の特徴を覚えておく事が出来る装置も出来ました。

これで、後は、動物が通る可能性がある場所に、動きに反応
して撮影するカメラを仕掛けておけば良いのです。撮影した
映像と、覚えておいた動物の個体の特徴を、照らし合わせて
識別する事も出来るでしょう。又は、撮影してすぐに照らし
合わせて、条件に合う映像だけ記録する事も出来るでしょう。
出来る限りたくさんの場所にカメラを仕掛けておけば、より
詳しく観察出来るようになるでしょう。

――◇◆◇――

先日、ある鉄道車両に、新たにGPSアンテナが装備されました。

カーナビが搭載されている自動車に乗ると良く見る、正方形
で平べったい手のひらに乗る位の大きさのアレです。自動車
で使われているGPSアンテナが、鉄道車両に装備されたのです。

注目したいのは、その鉄道車両が、十年とちょっと前に製造
された車両であると言う事です。何が言いたいのかと言うと、
製造されてから十年とちょっとの間、GPSアンテナ無しで走行
していたと言う事なのです。

では新たに装備されたGPSアンテナは、一体何なのでしょうか。

――◆◇◆――

鉄道車両にGPSアンテナは不要です。

もし自動車で使われているGPSアンテナが装備された鉄道車両
を見かけたら、それは本来の鉄道技術とは関係の無い、何か
別の目的があって装備されていると考えた方が自然なのです。

あなたの街を走る鉄道車両に、GPSアンテナは付いていますか。

――◆◇◆――

GPSアンテナが装備された鉄道車両は、これまで全く無かった、
と言ったら間違いになります。実際いまも現役で走っている
鉄道車両の中にGPSアンテナが装備された鉄道車両はあります。

ただし、GPSアンテナが装備された鉄道車両は、古い車両です。
いま新しく製造される車両より何世代も前に製造された車両
にGPSアンテナが装備されていて、現役で残っているのです。

古い車両に搭載されたGPSアンテナは、自動車で使われている
GPSアンテナとは違います。恐らく、鉄道車両にGPSアンテナ
が採用されていた時代には、まだカーナビが普及しておらず、
いまカーナビが搭載されている自動車に乗ると良く見る形の
GPSアンテナが、大量生産されていなかったのでしょう。

古い車両に搭載されたGPSアンテナは、一見してすぐにそれと
分かる形をしていません。GPSアンテナにつながったごつくて
でかい装置に「GPS」と書いてあるからやっとそれがGPSだと
わかる程、見慣れない形をしています。

その時代のGPSアンテナとGPS装置は、列車の位置と最低限の
識別コードを常時送信し続ける、単純な装置でした。情報は
地上で受信され、中央の指令所に集められ、中央の指令所で
情報を処理して、列車の位置を導き出していたのです。

では何故、その後製造された新しい鉄道車両にGPSアンテナが
採用されなくなってしまったのでしょうか。それは車載装置
の性能が向上して、車載装置で列車の位置を割り出して運行
に役立てる様になっていったからなのです。

車載装置にとって、GPSアンテナがもたらす情報は、必要以上
に余計な情報でした。車載装置にとって不必要な情報をそぎ
落とす為に、処理能力を浪費してしまう存在だったのです。

どういう事でしょうか。自動車との違いを考えてみましょう。
鉄道はレールのある場所以外に移動する事が出来ないのです。

鉄道は、レールを踏み外して、右に行ったり、左に行ったり
しません。常にレールのある方向にしか、移動しないのです。

常にレールのある方向にしか移動しないのなら、車輪の回転
を計測するだけで、かなり精密に位置を特定する事ができた
のです。車輪の摩耗で誤差が生じる事もあるから、ときどき
線路上に設けた運行支援装置(ATS等)の地上子からの情報で
修正すれば、目的に沿った情報を得る事が出来ました。

そうなるとGPSアンテナはお役御免でした。姿を消したのです。

 
posted by miraclestar at 22:02 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする