2019年09月17日

電車衝突事故の運転士はどの位置でブレーキをかけたのか 2

先日、9月5日に起きた電車衝突事故に衝撃を受けた、と言う
人は多かったのではないでしょうか。事故翌日、翌々日辺り
迄は、新聞やテレビで盛んに取り上げられ、事故原因を知り
たい欲求が膨らんでいったのではないかと思います。

ところが、9月8日に台風15号接近のニュースが取り上げられ
る様になった辺りから、そこにあるはずの何かが無いと言う
異常事態が続いています。ある事が当たり前で疑問を持った
事が無かった何かが無くなったとき、本当はそこにあるはず
だ、と言う感覚はあっても、実際それが何だったのか、思い
出すのは難しいものなのかも知れません。それは事故の全容
解明と責任追及をするテレビ番組であり、新聞報道でしょう。

台風15号の被害がひどくて停電が長引いたとしても、それと
同じくらい、いや半分、三分の一でも、時間や紙面を割いて
報道するだけの情報ではないでしょうか。

行政と警察の責任追及がなされなければなりません。

行政とは、国土交通省であり、神奈川県であり、
横浜市の事です。警察とは神奈川県警の事です。

――◇◆◇――

先週の新聞を調べた範囲で、他に無い中、見つけた記事です。

(前略)別ルート走行 残る疑問
横浜市の京急線の踏切で快特電車と大型トラックが衝突した事故は12日で発生から1週間。神奈川県警の調べで、トラックが通常の走行ルートから外れた末に踏切で立ち往生したことは判明したが、なぜその道を通ったのかは謎だ。(中略)ある捜査員は「どうしてこんな道に迷い込んだのか」と首をかしげる。(中略)目的地の千葉県成田市に向かうには交差点をUターンして首都高速道路に乗るのが自然だが、右折を繰り返して線路沿いの幅約3.8メートルの市道を現場に向かった。この道に大型車の通行規制はなく、事故を受けて県警は規制を検討している。(中略)県警は電車の運転士や乗客から事情を聞き、ブレーキ操作の状況についても調べる。(後略)

〈日経新聞 9月12日 夕刊 11面〉

首をかしげる、なんてスッとぼけた態度で責任を逃れ、何も
問題が無かったかのような雰囲気を醸し出したまま幕引きを
図ろうとする行政や警察を、何の咎めも無く取り逃がす様な
事を許してはなりません。事故を受けて、等と言った警察の
言い分を鵜呑みにするのではなく、本当に危険性を認識して
いなかったのか、危険性を指摘する声は上がっていなかった
のか、本当に誰も何らかの対策を取らなければならない、と
気付いていた人がいなかったのか、調べ上げて突き付けなけ
れば、警察のやりたい放題が止まりません。

テレビ番組は現地にテレビカメラを持ち込んで、道路の状況
を調べてみてはいかがですか。行政や警察が誘導する方向と
は違った見解が得られるのではないでしょうか。トラックが
通れる道で道を間違える事は、何も特別な事ではありません。
誰でもやっている事ではないですか。問題は間違えた後です。
捜査員は、スッとぼけていますけれども、運転手の気持ちを
考えれば、実に自然なルート選択だ、と思います。この様な
取材映像はテレビ映えするし、国民の知りたい欲求に応える
事も出来ると思います。何故やらないのでしょうか。

――◇◆◇――

ブレーキ操作の状況についての調査結果は、いつになったら
出てくるのでしょうか。恐らく、出て来る事は無いでしょう。

実際のところ、運転台にある運転状態を記録する装置の記録
媒体が、紛失したり、破損したり、と言った事態でない限り、
一日もあればすぐに調べる事が出来る内容であるはずです。

調査に手間取っているはずはなく、不都合な調査結果だから
出したくないと渋っている、と考えるのが自然でしょう。

――◆◇◆――

運転士が何処でブレーキ操作をしたか、と言う情報は、今回
の事故において、事故の原因や責任の所在、追及の方向性を
左右する最大の鍵となる情報です。

(前略)運転手は何度か左折を試みた後、断念。(京急の)職員2人は、その場を去ろうとした。その後、(中略)トラックは右折して踏切内に進入することができたが、途中で遮断機が下り始め、荷台部分にかかってしまった。立ち去ろうとしていた職員2人は急いで非常ボタンを押したが、その後、衝突事故が起きた。京急によると、踏切は、遮断機が下がった後で踏切内に高さ30センチ以上の障害物があると異常を検知する。事故では、職員2人が非常ボタンを押す以前に、装置は踏切内に入っていたトラックを検知。(中略)信号機が異常を知らせる赤の点滅に変わっていた。点滅は事故の40〜35秒前に始まっていたという。(中略)信号が見える600メートル手前で非常ブレーキを操作すれば踏切手前で電車は止まるというが、事故は起きた。(後略)
〈日刊スポーツ 9月7日(朝刊) 25面〉

遮断機が下がり始め荷台部分にかかってしまった様子を見た
京急の職員が急いで非常ボタンを押した、と言う事は、踏切
が動作したとほぼ同時に信号が点滅を始めた、と言って良い
でしょう。このとき電車は、踏切から千メートル手前を走行
していました。この時点で運転士が信号を視認してブレーキ
をかけていれば、完全に防ぐ事が出来た事故でした。

しかし残念な事に、電車と信号の間にはカーブがあり、信号
は全てカーブの先にありました。京急は600メートル手前で
信号を視認する事が出来、520メートル手前迄にブレーキを
かければ停止出来ると主張しますが、果たして、これが安全
対策として万全なものだったのでしょうか。いままで事故が
無かったのか、立ち往生した側の責任、とされて省みられる
事が無かったのか、穴がある安全対策が長年放置されて来た
事実は、ほぼ疑いの余地が無い様に思えます。

(前略)運転士の信号の確認状況やブレーキ操作が問題となったケースでは2009年4月、山形県南陽市のJR奥羽線の踏切内で普通列車が車と衝突、1人が死亡した事故がある。事故を調査した運輸安全委員会は10年3月、停止信号が電柱に紛れて見えづらく、運転士の確認が遅れたことが原因と結論付けた。(後略)
〈日経新聞 9月7日 朝刊 35面〉

鉄道会社を監督するのは国土交通省の役割です。安全対策を
確認してお墨付きを与えるのが国土交通省の役割です。その
国土交通省も長年見逃してきた事になるでしょう。それほど
遠くない過去に、ほぼ同じ原因で起きたと思える事故の事例
があったにもかかわらず、見逃していたと言う事です。

国土交通省の責任を明らかにし追及しなくても良いのですか。

このまま放置すれば、忘れた頃に発表があり、事故を受けて、
等と言い出すのでしょう。この様な行政の言い分を認めても
良いのですか。

とは言うものの、運転士が何処でブレーキ操作をしたか、と
言う情報が無い限り、今回の事件について考えを推し進める
事さえままならない、と言う現実もあるのかもしれません。

新聞やテレビが報道しない理由は、この情報が無いと、どう
報じれば良いか分からない、と言う側面もあるのかもしれま
せん。まるで蛇口をひねるかの様に、情報を握ったまま出し
渋る事で報道を規制しているのです。

このままでは、行政のやりたい放題が止まりません。

そう思いませんか。

――◆◇◆――

先日、運転士が何処でブレーキ操作をしたか、と言う問いに
対する結論について、9月8日までに報じられていた内容から、
確度の高い客観的な見解をまとめる事が出来たと言いました。

報道で、京急の電車は最高速度の120キロで走行していた場合、
急ブレーキをかければ約520メートルで停車する。との情報が
明らかにされていました。まず、この情報を元に「ブレーキ
をかけてから停止するまでの時間と速度と位置の関係性」を
明らかにする事を試みました。

本稿の第1回記事で出した結論は、すぐにおかしいと分かる
内容でした。何故なら、公開されている非常ブレーキの減速
性能値を、大きく上回る数値が含まれていたからです。

20190905accident02.png

そこで、公開されている非常ブレーキの減速性能値を上限と
して停止するやり方で計算し直す事にしました。上記の表を
確認して頂ければ、12.1秒までは減速度が上がり続けている
様子が読み取れると思います。そして12.2秒で減速度が4.5
になって以降はずっと減速度が4.5のまま変わらない様子が
読み取れると思います。そのまま停止するまで減速度が4.5
だとして計算した表になっています。この表の計算結果では、
ブレーキをかけてから29.3秒で停止するとの結論でした。

さて、ここから、です。この表が何の意味を持っているのか、
についてです。恐らく、何にも衝突しない場合の「ブレーキ
をかけてから停止するまでの時間と速度と位置の関係性」を
そこそこの精度で再現した表にはなっていると思うのですが、
あくまでコンピュータ上で式をこねくり回した数値の集まり
でしかないわけです。実験したわけではありませんし、今後
実験する見込みがあるわけでもありません。

報道では、衝突してから10秒走行したと報じられていました。
また、写真から明らかなように、衝突してから約70メートル
走行して停車しました。この事から表を読み取ると、およそ
時速45キロメートル前後で衝突したのではないかと思います。

ただ、この表はあくまで何にも衝突しない場合の「ブレーキ
をかけてから停止するまでの時間と速度と位置の関係性」を
再現した表であり、今回の事故の場合のそれとは違うのでは
無いか、と言う疑問が出て来るのが当然の流れでしょう。

まず、電車はトラックに衝突して速度が落ちるはずでしょう。
この影響を計算してみましょう。13000kgの静止した物体に
241500kgの時速45キロメートルで走行する物体が衝突して一
つの物体となって走行する様になったとき、衝突後の物体の
速度は運動量保存の法則で計算できます。計算すると、時速
45キロメートルのとき、時速2.3キロメートル減速するとの
結果が出ました。

次に、電車に押しつぶされ地面を引きずられていくトラック
の残骸の摩擦が電車にどの位の減速効果を及ぼすかについて
ですが、これは複雑過ぎて計算のし様がありません。ただし、
電車はトラックの残骸に行く手を阻まれる事無く、トラック
の残骸に乗り上げて先に行っているので、トラックの残骸と
地面の摩擦が電車に減速効果を及ぼしたと言うよりは、電車
の車輪とトラックの残骸の摩擦が電車に減速効果を及ぼした
と言った方が良いでしょう。

先頭車両は写真で見る限り、およそ45度斜めに傾いています。
念のため、この影響を計算してみましょう。電車の運動エネ
ルギーが、先頭車両の重心の位置エネルギーに変換されたと
考える事で計算できます。時速45キロメートルのとき、時速
0.39キロメートル減速するとの結果が出ました。

以上、検討した項目は、どれも上記表と今回の事故を比べて、
電車を減速させて、停車距離や時間を短くする効果を及ぼす
項目でした。どれもゼロでは無いけれども、それほど大きな
影響を及ぼさない、と言える結果なのではないかと思います。

逆に、電車を減速させる効果を緩め、停車距離や時間を長く
する効果を及ぼす何かについてですが、これは何よりも脱線
による影響が圧倒的でしょう。鉄道の車輪はレールとの摩擦
で制動力を得ています。鉄道の車輪がレールを滑ったら制動
力が急激に落ちてしまいます。それでも脱線するよりはマシ
で制動力はゼロではありません。実験したわけでは無いので
想像でしか無いのですが、脱線した車輪は恐らく枕木や地面
の上を滑っています。枕木の素材は木だったり、石だったり
します。金属同士、木同士、石同士だったらそこそこの摩擦
があるかも知れませんが、金属と木や石の摩擦はあまり期待
出来ません。でこぼこした地面を激しく上下動しながら滑る
ので、振動による損失だけが頼りです。複雑すぎて計算出来
ませんが、脱線した車両は、非常ブレーキをかけてレールの
上を走り続けている車両と比べて停車迄の距離や時間が長く
なると思います。

いくつか挙げてみましたが、複雑過ぎて分からない、と言わ
ざるを得ない結論に至るのではないでしょうか。小さな影響
しか及ぼさない項目もあるけど、大きな影響を及ぼしそうな
項目もある。単独でも影響を計算する事が困難な項目が複雑
に絡まり合ってわけが分からない状態だと思います。

(続く)

 
posted by miraclestar at 00:00 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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